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厚生労働省の循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策

公衆浴場業、旅館業等における循環式浴槽のレジオネラ症防止対策について、「公衆浴場における衛生等管理要領等について」(平成12年12月15日付け生衛発第1811号同局長通知)等に基づき、営業者による適切な管理が行われるよう、平成12年度厚生科学研究に基づき、具体的な管理方法等が厚生労働省からマニュアルとして作成されました。以下、その抜粋をご紹介します。
(参考:循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル) 

循環式浴槽の管理方法

●関連法規等に規定されている管理概要

(旧)厚生省は、平成12年12月15日に「公衆浴場における衛生等管理要領等について」(生衛発第1811号生活衛生局長通知)(以下「管理要領等」と言います。)により、「公衆浴場における衛生等管理要領」および「旅館業における衛生等管理要領」を全面改正し、公衆浴場等の衛生管理の強化を図りました。この管理要領等において、循環式浴槽は「連日使用型」と「毎日完全換水型」に区分されました。なお、浴槽水の水質については、「公衆浴場における水質基準等に関する指針」(以下「指針」と言います。)の中では、レジオネラ属菌に関する水質基準を設け、10CFU/100mL未満、すなわち現行の検査方法で不検出という基準が設定されました。また、レジオネラ属菌の増殖を防ぐために、管理要領等で以下のような管理要点が示されました。
(1)循環ろ過装置は、1時間当たりで、浴槽の容量以上のろ過能力を有すること。
(2)循環ろ過装置を使用する場合は、ろ材の種類を問わず、ろ過装置自体がレジオネラ属菌の供給源とならないよう、消毒を1週間に1回以上実施すること。
(3)浴槽水の消毒に用いる塩素系薬剤は、浴槽水中の遊離残留塩素濃度を1日2時間以上0.2~0.4mg/Lに保つことが望ましいこと。
(4)温泉の泉質等のため塩素消毒ができない場合は、オゾン殺菌または紫外線殺菌により消毒を行うこと。この場合、温泉の泉質等に影響を与えない範囲で、塩素消毒を併用することが望ましいこと。
(5)連日使用型循環式浴槽では、1週間に1回以上定期的に完全換水し、浴槽を消毒・清掃すること。
(6)管理記録を3年以上保存すること。
などです。
公衆浴場では、毎日完全換水することが前提となっています。営業中は、充分に原湯又は循環ろ過水を供給することにより溢水させ、浴槽水を清浄に保ちます。一日の営業終了後に完全に水を落とし(貯め湯をせずに)、浴槽、ろ過装置、循環系を消毒・清掃します。浴槽の清掃管理を適切に実施していても、ろ過装置や配管系の消毒・清掃を怠るとレジオネラ属菌の繁殖を許すことになります。
温泉などで、砂ろ過等の循環ろ過装置を設置して継続的に営業する場合には、塩素消毒を併用することが前提となります。塩素を添加せずに連続運転をすると、ろ材にたまった有機物を栄養源として微生物が繁殖し、バイオフィルム(生物膜、ぬめり)を形成します。バイオフィルムの中では、レジオネラ属菌などの微生物は、消毒剤などの殺菌作用から守られて生息し続けます。これを除去せずに浴槽水だけを消毒しても、十分な効果が期待できないことは明瞭です。
ろ過器内に微生物を繁殖させて湯を浄化する循環式浴槽(いわゆる24時間風呂)は、ろ過装置がレジオネラ属菌の供給源になるため、使用者はその危険性をよく認識しなければなりません。特に、業務用24時間風呂を、感染に対する抵抗力が高くない高齢者を対象とする施設に設置する場合には、特に十分な管理が必要です。

●循環式浴槽の構造上の問題点とチェックポイント

循環式浴槽は、ろ過器や消毒装置が、常にその能力を発揮できる状態に維持されていることが必要で、以下に構造上の問題点とチェックポイントを示します。
(1)循環湯の吐出口は浴槽の水面下に設ける。
循環湯の吐出口の位置は、必ず浴槽の水面より下に設け、浴槽内の湯が部分的に滞留しないように配置しなければなりません。循環湯の一部を、浴槽水面より上部に設けた湯口から浴槽内に落とし込む構造のものがよく見受けられます。これは旅館や娯楽施設の浴場で、湯を豊富に見せるための演出として行われているようですが、新しい湯と誤解して口に含んだりする入浴客もあり、また、レジオネラ症感染の原因であるエアロゾルが発生するなど衛生的に危険なものです。浴槽の湯口からは、新しい温泉水や湯、水以外は流さないようにする必要があります。
(2)浴槽循環湯を打たせ湯に使用しない。
湯を上部から落として、マッサージ効果を期待した「打たせ湯」が流行していますが、多量な湯を必要とするため、湯の豊富な温泉地以外では、ほとんどが浴槽循環湯を落としています。打たせ湯は口や目にも入り込むことがあるため、循環浴槽水やオーバーフロー水等を再利用した水をそれに使用することは衛生的に問題があり、また、エアロゾルが発生するのでレジオネラ感染の危険もあるため好ましくありません。
(3)気泡発生装置の使用は、更に管理面を強化する必要がある。
現在、気泡風呂、超音波あるいはジェット風呂などと称する、浴槽内で気泡を発生させて入浴を楽しむ浴槽が多く設置されています。しかし、水面上で気泡がやぶれてエアロゾルが発生するため、レジオネラ属菌が飛散するおそれがあります。従って気泡発生装置を使用する場合はこれによる感染の危険が高くなります。浴槽水の水質基準を厳守するとともに、気泡発生装置の責任者を定めて、責任の所在を明確にしておくなど、更に管理面を強化する必要があります。
(4)浴槽への補給水や補給湯の配管を浴槽循環配管に直接接続しない。
浴槽の湯は、入浴者によるかけ湯や溢水などによって減っていくため、新しい湯や水を補給する必要があります。浴槽に補給する湯や水は、必ず浴槽水面上部から浴槽に落としこむ方法をとり、浴槽の湯が給湯・給水配管に逆流しないようにしなければなりません。浴槽循環配管に、給湯配管あるいは給水配管を直接接続することは、逆流防止のため禁止されています。逆止弁を付けても、細菌等の汚濁物質の逆流を防ぐことはできません。
(5)浴場排水熱回収用温水器(熱交換器)の給水管にピンホールがないことを確認する。
現在、多くの公衆浴場などで使われている熱回収用温水器は、汚れた浴場排水と給水が管壁だけで接しているため、腐食などで管にピンホールができた場合には、給水を汚染するおそれがあります。浴場排水は非常に汚れており、給水系統が汚染された場合の被害は甚大なものとなります。従って、給水管は常に正圧(排水管より圧力が高い状態)にするとともに、ピンホールができていないか定期的に検査を行い、汚染防止に努めるなど温水器の維持管理には十分な注意が必要です。
(6)浴槽オーバフロー回収槽は定期的に清掃を行う。
オーバフロー還水方式の浴槽循環設備の場合、オーバフロー回収槽は、清掃が容易に行える位置・状態に設置します。地下埋設タイプの回収槽は、十分な清掃ができないなど維持管理の支障となるため、周囲に十分な点検スペースをとった床上設置槽を推奨します
オーバフロー回収槽内部は常に清浄な状態を保つために、定期的に清掃を行う必要があります。
(7)調節箱は定期的に清掃を行う。
公衆浴場では、洗い場の湯栓(カラン)やシャワーへ送る湯の温度を調節するために「調節箱」を設置している場合があります。この調節箱内部の湯温は、レジオネラ属菌の繁殖に適した温度となるため注意が必要です。従って、定期的に調整箱の清掃を行い、常に清浄な状態を保つことが大切です。
(8)温泉水の貯湯タンクの維持管理を適切に行う。
温泉等で貯湯タンクを設けている場合には、レジオネラ属菌の繁殖あるいは混入を防ぐために、湯温は60℃以上に設定し、タンクが外気と遮断されているか、破損箇所はないかを定期的に調べます。また、貯湯タンクなどは定期的に清掃を行い、常に清浄な状態を保つことが大切です。
他に、源泉水を一定の区域で集中管理している場合の貯湯タンクにおいて、タンクから各施設への配湯管は、高温水でも劣化せず、温度が低下しにくい材質のものを使用します。
また、自家泉源の湯を貯湯タンクに貯めている施設で、湯温が60℃以上に設定出来ない場合には、元湯がレジオネラ属菌に汚染されている可能性があるので、元湯の貯湯温度を高められる装置に取り替えることを検討する必要があります。

●浴槽の水質管理

1)水質基準・検査方法・検査頻度
(1)水質基準
浴槽水の水質基準は、濁度、過マンガン酸カリウム消費量、大腸菌群およびレジオネラ属菌の4項目が規定されています。「旅館業における衛生等管理要領」では、これらの項目に加えアンモニア性窒素を加えることが望ましいと規定されています。なお、各項目の基準値は以下のとおりです。
・濁度は、5度以下であること。
・過マンガン酸カリウム消費量は、25mg/L以下であること。
・大腸菌群は、1個/mL以下であること。
・レジオネラ属菌は、10CFU/100mL未満であること。
・アンモニア性窒素は、1mg/L以下であること。
(2)検査方法
水質基準項目の検査は以下の方法で行います。
・濁度、過マンガン酸カリウム消費量は、「水質基準に関する省令」(平成4年厚生省令第69号)で定める検査方法によること。
・大腸菌群は、「下水の水質の検定方法等に関する省令」(昭和37年厚生省令・建設省令第1号)別表第1(第6条)の大腸菌群数の検定方法によること。
・レジオネラ属菌は、冷却遠心濃縮法またはろ過濃縮法のいずれかによること。
(3)検査頻度
浴槽水等の水質検査は、循環式浴槽の形態によって以下のとおり、定期的に行うこととされています。なお、この検査に関する書類は、3年以上保存しなければなりません。
・毎日完全換水型: 1年に1回以上
・連日使用型 : 1年に2回以上(浴槽水の消毒が塩素消毒でない場合、1年に4回以上)
2)消毒方法
浴槽水などの消毒方法は、「公衆浴場における衛生等管理要領」で以下のように定められています。
・浴槽水の消毒に用いる塩素系薬剤の注入(投入)口は、浴槽水が循環ろ過装置内に入る直前に設置することが望ましいこと。
・浴槽水の消毒に用いる塩素系薬剤は、浴槽水中の遊離残留塩素濃度を、1日2時間以上0.2~0.4mg/Lに保つことが望ましいこと。
・浴槽水の遊離残留塩素濃度を、適宜測定し、その記録を3年以上保存すること。
・温泉の泉質等のため、塩素消毒ができない場合には、オゾン殺菌または紫外線殺菌により消毒を行うこと。この場合、温泉の泉質等に影響を与えない範囲で、塩素消毒を併用することが望ましいこと。

●その他の浴槽設備の管理で注意すること

(1)露天風呂
露天風呂は、常時、レジオネラ属菌の汚染の機会にさらされているため、浴槽の湯は常に満杯状態とし、溢水を図り、浮遊物の除去に努める必要があります。循環ろ過装置を使用していない浴槽水や毎日完全換水型浴槽水は、毎日完全に換水し、連日使用型循環浴槽水は、1週間に1回以上定期的に完全換水し、浴槽の消毒・清掃を行います。
内湯と露天風呂の間は、配管を通じて、あるいは入浴客によって、露天風呂の湯が内湯に混じることのないように注意する必要があります。
(2)酸性温泉と食塩泉
レジオネラ属薗の性状とこれまでの試験成績から、酸性(pH5.0以下)の温泉水や食塩泉では、レジオネラ属菌は棲息しないと考えられます。ただし、試験管内の実験では、3%食塩の存在下でレジオネラ属菌は増殖はしませんが、死滅もしないという結果も得られています。食塩泉と表示されている温泉でも、食塩濃度は様々であると考えられます。また、pH値や食塩濃度を含め、温泉の泉質は補給水の注入や循環ろ過の継続、入浴者の増減によって変化し、決して不変ではありません。そのため、湯のpH値が低く、現行の細菌検査方法でレジオネラ属菌が検出されない場合でも、泉質に関係なく定期的に保守・管理を行うことが重要です。
(3)家庭用循環式浴槽の管理
家庭用循環式浴槽の日々の管理に関しては、特に基準があるわけではありません。しかし、その使用にあたっては、上記の管理方法を参考にして、事故を未然に防ぐことが大切です。
家庭用循環式浴槽のろ過装置は、ほとんどのものが小型で、その大半はいわゆる生物浄化装置と考えられます。すでに述べたように、生物浄化方式とは、浴槽水中の有機物等を微生物によって分解させるもので、ろ過槽内にアメーバなどの微生物が繁殖することで、初めて浄化能力が得られるようになります。しかし、ろ過槽内に微生物を繁殖させれば、これに寄生するレジオネラ属菌なども同時に繁殖します。病原微生物のみを、選択的に排除することはできませんし、塩素系薬剤等の残効性のある消毒方法は使えません。微生物学的な安全性を優先すれば、ろ過槽を含んだ浴槽システム全体の消毒には、残効性のある塩素系薬剤等の使用を推奨せざるを得ません。矛盾するようですが、生物浄化方式のろ過装置内に微生物を繁殖させないように管理することが重要です。したがって、これらの装置のろ過能力は低下すると考えられますが、レジオネラ属菌の汚染防止のためには、ろ過槽の徹底的な逆洗、浴槽全体の消毒および完全換水を頻繁に行うことが推奨されます。

安全・あんしんなレジオネラ菌対策

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